2010年11月19日金曜日

Japan is this autumn.

「おりとりて はらりとおもき すすきかな」(飯田蛇笏)
お月見に飾ろうとススキを採りに行きました。かわらに一面、穂を風に揺らしながら涼しげに生えています。その姿は軽やかに見え、持って帰るときに、いかにも軽そうです。しかし、折り取って手に持ってみると、意外にずっしりと重さを感じます。それは、ススキの重さというよりも、そのススキの生命の重さかもしれません。いくら軽そうに見える姿でも、生きていくということは重いことなのかもしれません。img
今年の中秋の名月の今日は、晴天率に反してきれいな月を見ることが出来ました。ここ数日、ブログでこの話題を続けているので、今日、実際に空を見上げた人が多いかもしれません。まさか、我を忘れて夜が明けるまで眺めていた人はいないと思いますが。
 先日、園に秋の花でも飾ろうかということになり花屋に買いに行きました。しかし、秋の花はどうもどれも地味で、余り子ども向きではありません。そこで、とりあえず、お月見用としてのセットを買って帰りました。 秋の花の代表というと、もちろん思い浮かべるのは、万葉時代からの「秋の七草」ですが、これらの花も派手な植物が入っていず、しかし、ひっそりと秋の到来を知らせてくれる花ばかりです。
 「秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種の花 萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」(山上憶良 やまのうえのおくら、万葉集)
 万葉集の中で山上憶良が七草を選んで歌いこんだのが「秋の七草」になったのです。ですから、全く個人的主観ですが、これが今に至っています。
 この歌の中の「尾花」とはススキの花穂が出ている時の呼び名です。今は、川原などに一面に生えている植物ですが、昔は、ススキは私たちの暮らしになくてはならない植物でした。茎葉は屋根材や家畜のえさに、根茎は解熱・利尿に用いられていました。ですから、お月見にススキを供えるのは、その風情だけでなく、豊かな穂が実りの秋を連想させるので、豊作を祈願したものといわれています。
 一番論議になるのが、最後に挙げられた「朝貌の花」です。これをそのまま取ると、小学校1年生の夏の観察定番である「朝顔」でしょう。ですから、朝顔というと夏を代表する花のようで、秋というイメージではありませんが、その花の咲く期間が長く、俳句の季語としては秋になっています。しかし、「万葉集」や「源氏物語」に出てくる朝顔は現代の朝顔ではなく、どうも、「キキョウ」「ムクゲ」だと言われています。私は、桔梗の花が好きなので、秋の七草に入れて欲しいと思います。

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